ポンコツ自動車 [風景]
芸術の秋ですなぁ~。
どうも野ねずみです。
せいちゃんの自動車はポンコツの自動車。
塗装は剥げ落ち、シートもボロボロ。
所々綿が出ちゃってます。
でも、せいちゃんはこの自動車が大好き。
幼い頃からずっと一人だったせいちゃんに初めてできた家族がこの自動車。
周りの皆は「せいちゃん。もっと綺麗な自動車に乗りなよ。そんなポンコツ自動車かっこ悪いよ。」と言いますが、せいちゃんはこの自動車が好き。
自分に合っている気がするから。
せいちゃんは休みの日になると、決まってポンコツ自動車を洗いに行きます。
洗う度に塗装が剥がれてしまうけど、せいちゃんは一生懸命綺麗にしてあげます。
ある日いつものようにポンコツ自動車を洗っていると、女の人がせいちゃんに声をかけました。
「この自動車の写真撮ってもいいですか?」と。
せいちゃんはキョトンとした顔で「ボロボロだから、撮っても良い写真にはなりませんよ。もっと綺麗な自動車を撮った方がいいのでは。」と答えました。
「この自動車がいいんです。撮ってはダメですか?」と笑顔で女の人は言いました。
「ありがとう。好きに撮ってください。」とせいちゃんも笑顔で言いました。
写真を撮っている女の人を見つめながら、せいちゃんは「この自動車。僕の家族なんです。」と話しかけました。
この人になら、ポンコツ自動車を家族だと伝えても受け止めてくれる気がしたからです。
写真を撮る手を止めて女の人は、「素敵な家族ですね。」と笑顔を見せてくれました。
それからせいちゃんの休みの日は、ポンコツ自動車を洗う事と彼女とお話する事の二つになりました。
それから数ヵ月後の休みの日。
せいちゃんはいつものようにポンコツ自動車を洗っていました。
しかし、いつもと違うのはとても寂しそうな顔をしていました。
「今日は寂しそうな顔をしていますね。どうしたのですか?」といつもの時間にカメラを持った女の人がやってきました。
「この自動車、病気になってしまったんです。心臓が弱ってしまって、いつ止まってもおかしくないそうです。」とせいちゃんは、彼女の方を振り返らずに答えました。
「私、いつもあの丘の上で写真を撮っているんです。いつかこの自動車にも見せてあげてください。とても素敵な景色ですよ。」と言い残し女の人は歩き出しました。
自動車を洗う手を止め去っていった女の人の後姿に目をやると、今日は白いワンピースを着ていました。
遠目からでもその美しさははっきりとわかりました。
ふと女の人は振り返り、せいちゃんに向かい丘の上を指差しました。
いつもの笑顔で女の人は丘を指差していました。
自動車を洗い終えたのは日が傾き始めた頃でした。
バケツやタオルを自動車の中に放り込むと、せいちゃんはポンコツ自動車に「丘へ行こうか。」と呟きました。
苦しそうに「ガコン、ガコン」言いながらもポンコツ自動車は坂道を登っていきました。
止まりそうな心臓を必死で動かしてポンコツ自動車は登っていきました。
坂を登りきるとポンコツ自動車は「ガクン!」と大きな雄叫びをあげて動かなくなってしまいました。
せいちゃんはポンコツ自動車から降りると「良く頑張ったね。どうもありがとう。」と優しい声で話しかけました。
ポンコツ自動車はかすれるような声で「プシュ、プシュ」と言っていましたが、いずれ何も言わなくなり辺りは静寂に包まれました。
せいちゃんはしばらく自分の住んでいる町を見下ろしていました。
日は顔を隠し、辺りは薄っすら闇を招き始めました。
せいちゃんは足元に目落とした時にある物に気づきました。
カメラ。
それは見慣れたカメラでした。
「?」
そのカメラをそっと拾うとゆっくりとファインダーを覗いてみました。
覗いた先にはボヤけた赤い物が見えました。
飛び出たレンズの部分を回すと赤い物はだんだん鮮明に見えだしました。
その赤い物も見慣れた物でした。
違っていたのは、昼間見た時は白だった。
せいちゃんは転がり落ちるようにその赤い物へと駈け寄りました。
そして抱き起こしたのですが、そこには見慣れた笑顔はありませんでした。
せいちゃんは抱きかかえると静寂の闇を走り出しました。
助けたい。
心の中はそれ一つでした。
どんなに走っても静寂からは逃れられませんでした。
闇と静寂は出口の無い迷路を作り出しせいちゃんを飲み込んでしまいました。
せいちゃんの心の中の助けたいは、だんだんと絶望へと変わり始めました。
その時。
辺りを揺るがすほどの雄叫びが闇と静寂を切り裂きました。
最後の力を振り絞るような雄叫び。
辺りを見渡したせいちゃんの目に二つの丸い光が飛び込んできました。
ポンコツ自動車。
力強い心臓音と共にせいちゃんを迷路から救い出してくれました。
せいちゃんはポンコツ自動車が大好きでした。
でも、今は綺麗なかっこいい自動車に乗っています。
あれからせいちゃんには家族が増えました。
ポンコツ自動車はいないけど、せいちゃんの助手席には2人います。
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どうも野ねずみです。
せいちゃんの自動車はポンコツの自動車。
塗装は剥げ落ち、シートもボロボロ。
所々綿が出ちゃってます。
でも、せいちゃんはこの自動車が大好き。
幼い頃からずっと一人だったせいちゃんに初めてできた家族がこの自動車。
周りの皆は「せいちゃん。もっと綺麗な自動車に乗りなよ。そんなポンコツ自動車かっこ悪いよ。」と言いますが、せいちゃんはこの自動車が好き。
自分に合っている気がするから。
せいちゃんは休みの日になると、決まってポンコツ自動車を洗いに行きます。
洗う度に塗装が剥がれてしまうけど、せいちゃんは一生懸命綺麗にしてあげます。
ある日いつものようにポンコツ自動車を洗っていると、女の人がせいちゃんに声をかけました。
「この自動車の写真撮ってもいいですか?」と。
せいちゃんはキョトンとした顔で「ボロボロだから、撮っても良い写真にはなりませんよ。もっと綺麗な自動車を撮った方がいいのでは。」と答えました。
「この自動車がいいんです。撮ってはダメですか?」と笑顔で女の人は言いました。
「ありがとう。好きに撮ってください。」とせいちゃんも笑顔で言いました。
写真を撮っている女の人を見つめながら、せいちゃんは「この自動車。僕の家族なんです。」と話しかけました。
この人になら、ポンコツ自動車を家族だと伝えても受け止めてくれる気がしたからです。
写真を撮る手を止めて女の人は、「素敵な家族ですね。」と笑顔を見せてくれました。
それからせいちゃんの休みの日は、ポンコツ自動車を洗う事と彼女とお話する事の二つになりました。
それから数ヵ月後の休みの日。
せいちゃんはいつものようにポンコツ自動車を洗っていました。
しかし、いつもと違うのはとても寂しそうな顔をしていました。
「今日は寂しそうな顔をしていますね。どうしたのですか?」といつもの時間にカメラを持った女の人がやってきました。
「この自動車、病気になってしまったんです。心臓が弱ってしまって、いつ止まってもおかしくないそうです。」とせいちゃんは、彼女の方を振り返らずに答えました。
「私、いつもあの丘の上で写真を撮っているんです。いつかこの自動車にも見せてあげてください。とても素敵な景色ですよ。」と言い残し女の人は歩き出しました。
自動車を洗う手を止め去っていった女の人の後姿に目をやると、今日は白いワンピースを着ていました。
遠目からでもその美しさははっきりとわかりました。
ふと女の人は振り返り、せいちゃんに向かい丘の上を指差しました。
いつもの笑顔で女の人は丘を指差していました。
自動車を洗い終えたのは日が傾き始めた頃でした。
バケツやタオルを自動車の中に放り込むと、せいちゃんはポンコツ自動車に「丘へ行こうか。」と呟きました。
苦しそうに「ガコン、ガコン」言いながらもポンコツ自動車は坂道を登っていきました。
止まりそうな心臓を必死で動かしてポンコツ自動車は登っていきました。
坂を登りきるとポンコツ自動車は「ガクン!」と大きな雄叫びをあげて動かなくなってしまいました。
せいちゃんはポンコツ自動車から降りると「良く頑張ったね。どうもありがとう。」と優しい声で話しかけました。
ポンコツ自動車はかすれるような声で「プシュ、プシュ」と言っていましたが、いずれ何も言わなくなり辺りは静寂に包まれました。
せいちゃんはしばらく自分の住んでいる町を見下ろしていました。
日は顔を隠し、辺りは薄っすら闇を招き始めました。
せいちゃんは足元に目落とした時にある物に気づきました。
カメラ。
それは見慣れたカメラでした。
「?」
そのカメラをそっと拾うとゆっくりとファインダーを覗いてみました。
覗いた先にはボヤけた赤い物が見えました。
飛び出たレンズの部分を回すと赤い物はだんだん鮮明に見えだしました。
その赤い物も見慣れた物でした。
違っていたのは、昼間見た時は白だった。
せいちゃんは転がり落ちるようにその赤い物へと駈け寄りました。
そして抱き起こしたのですが、そこには見慣れた笑顔はありませんでした。
せいちゃんは抱きかかえると静寂の闇を走り出しました。
助けたい。
心の中はそれ一つでした。
どんなに走っても静寂からは逃れられませんでした。
闇と静寂は出口の無い迷路を作り出しせいちゃんを飲み込んでしまいました。
せいちゃんの心の中の助けたいは、だんだんと絶望へと変わり始めました。
その時。
辺りを揺るがすほどの雄叫びが闇と静寂を切り裂きました。
最後の力を振り絞るような雄叫び。
辺りを見渡したせいちゃんの目に二つの丸い光が飛び込んできました。
ポンコツ自動車。
力強い心臓音と共にせいちゃんを迷路から救い出してくれました。
せいちゃんはポンコツ自動車が大好きでした。
でも、今は綺麗なかっこいい自動車に乗っています。
あれからせいちゃんには家族が増えました。
ポンコツ自動車はいないけど、せいちゃんの助手席には2人います。
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今回も詩人ですね^^
芸術の秋にはちょっとだけ早いですよ?(笑)
むかし同じ型のジムニーを買おうと思いましたが、
商用車なので乗り心地も悪い点で出たてのパジェロミニを買っちゃいました♪
こういう丸い目の車好きなんですよね☆
by とみっち (2010-08-16 13:35)
ジムニー、めちゃくちゃ格好いいですねぇ。
泣けちゃうな。
歳とともに涙もろい小太郎ですヾ(´▽`;)ゝ
by 小太郎 (2010-08-16 22:05)
とみっちさんへ
おはようです♪
自分このジムニ-ボロボロなところが良くて購入したのですが、修理個所が増えてきてしまい困ってます(笑)
この車、夜駐車場に止めておいたら、両サイドミラーをパクられました。。。
パジェロミニもいいですよね♪
いつか乗ってみたいです^^
小太郎さんへ
おはようです☆
自分も最近、涙もろくなってきました。。。
やはり、歳とともに涙もろくなってくるのでしょうかね^^;
by 野ねずみ (2010-08-17 06:50)